Sponsored by 松尾捺染株式会社(船場盛進堂)&船場白生地商店
目次
プロローグ
さて、皆様。
2021年10月に船場マップにて公開した船場盛進堂の記事を覚えていらっしゃっるだろうか。
まだ記事を読んでない方のために少しおさらいしよう。
船場盛進堂は、松尾捺染(まつおなっせん)株式会社という生地プリント加工の企業が運営するショップで、自社で加工した上質なプリント加工の生地を販売している。
松尾捺染株式会社は、数々の有名ブランド・ハイブランドのプリントを手がける大阪の企業。国内有数のプリント手法の多さと地の目に対して真っ直ぐにプリントする一流の技術を持っている。
先般の記事では、第一部としてこちらのショップを写真や動画をまじえながら紹介した。
第一部の記事はこちら↓↓↓
本記事では船場盛進堂(せんばせいしんどう)という船場にある布屋さんを紹介するのだが、二部構成を予定している。 第一部は、お店について。 第二部は心が躍る工場見学だ。 第二部の工場見学のリポートは、船場マップ初の試みになるのでとてもワクワクしている。 工場見学は202...
そして、第二部として工場を見学し記事を書くことになっていた。
そうそれが今ご覧いただいてる記事である。
さて、その工場見学。2022年8月に行ったのだが、、、。
ただの工場見学ではない!
なんと、船場白生地商店に生地をご提供いただき、その生地を使用して松尾捺染株式会社が船場マップのオリジナル生地をプリントしてくださることになったのだ。
船場盛進堂(sembaseishindo)X
船場白生地商店(sembaseishirokijishoten)X
船場マップ(senbamap)
によるプロジェクトなので頭文字をとり、名付けてプロジェクトSと勝手に名づけてみた。
本記事、プロジェクトSでは工場見学及び船場マップの生地プリントの様子も交えつつ紹介していきたい。
また、船場マップの読者は手芸・洋裁を趣味とする方から、作家、お教室や業者もいる。オリジナルの生地を制作してみたい方にも参考になるようにプリント生地の手法とその特徴、完成するまでの流れまで書いてみようと思う。
船場マップのためにと生地を提供してくださった船場白生地商店様、プリントを加工してくださった松尾捺染株式会社(船場盛進堂)様、に深く深く感謝の意を表したい。
準備
さて、プロジェクトの実施にあたり当然準備も必要になってくる。船場白生地商店・松尾捺染株式会社(船場盛進堂)と共に行った作業は下記だ。
- 生地の準備
- デザイン
- 見本作成
生地の準備
プリント用の生地は持ち込む方法と松尾捺染株式会社にて準備してもらう方法がある。今回は先般に記載した通り船場白生地商店にご提供いただくことになったので「持ち込み」にした。
船場白生地商店は、糸から選び染色にあう生地を作る数少ない染め下晒生地専門の生地メーカーだ。
船場白生地商店は、1938年創業の大江商店という卸問屋が運営しているお店だ。 これまで卸専門で小売りはしていなかったのだが、数年前に倉庫にきた服飾学生が使用している生地の品質の低さを見て「これからアパレル業界を担う学生に上質な生地を適切な価格で提供したい」と2018年に船場センタービルにお店...
そんな船場白生地商店様が本プロジェクトのために提供してくださったのがこちら。
超長綿のシャークスキン地とローン生地だ。
<シャークスキン地>
<ローン地>
一言で言えば素人が見て触れても わかる「めっちゃええ」生地!である。
肌ざわりも良く美しい。
超長綿とは通常の綿(ワタ)より長い繊維の綿を使用し作られる生地で、シルクのような上品な光沢がある。
こちらの生地はその超長綿を滋賀県の近江で塩素漂白したものだそう。
漂白
後染め用の生地であるため、余計な色を抜くために漂白するのだそう。
ちなみに均一に綺麗にしてくれるのが良い工場とのことだ。
また、糸の均質化を図り発色を安定させるためのシルケット加工(シル加工)が施されている。
ちなみにこのシル加工の強弱も生地の風合いをどのようにだすかに重要だそうだ。
あまりに強いシル加工をしすぎると生地の強度が保てなくなりさけやすくなる場合もあるそうだ。
こちらの生地を松尾捺染株式会社の工場に送っていただいた。
デザイン入稿
さてオリジナル生地の作成にあたってもう一つ重要な要素。
それはどのような柄をプリントするかだ。
今回デザインををお願いしたのはNaho Designさん。船場マップのデザインもしていただいた幅広く活躍する工業デザイナーだ。
今回は船場マップの表紙にもなっているデザインを元に生地用のデザインをお願いした。
(生地用に一部新配色になっている☆)
そして生地の耳にいれるデータは筆者が自分で作成したのだが、、、。
これが後程おもしろい、、、(汗)ことになる。
見本作成
データを松尾捺染株式会社様に送付して数日後。
見本完成のご連絡をいただいたので船場盛進堂さんへ。
<プリント見本>
<左がローン地、右がシャークスキン地>
見本の時点でついつい興奮!してしまうのだが、ここで色味や生地の耳の部分のサイズ感などを確認する。
船場白生地商店にも持っていきサンプルをみていただいた。
さて、上の画像をみてお気づきの方もいらっしゃるだろう。
そう。私が作成した生地耳のデータが大きすぎたのだ汗
色味はとてもよかったのでそのままで、耳の部分だけ一般的なサイズになるように調整をお願いした。
工場見学
いよいよ工場見学!
では早速、船場マップの生地プリント現場の様子を書く!
のではなく
今後プリント生地の制作を検討している方々のためにも、プリント加工方法及びその工程についてまた染色の基本についてを大まかに説明した上で船場マップの生地の染色現場をご覧いただきたいと思う。
工場見学の際は、全ての種類のプリント加工をみせていただいたのだが撮影できない箇所もあったので松尾捺染株式会社のホームページの画像等をお借りしつつ記事をすすめていきたい。
プリント加工方法とその特徴
さて、松尾捺染株式会社では大きくわけて3つのプリント加工方法を行っている。
- ロータリースクリーンプリント
- フラットスクリーンプリント
- デジタルプリント(染料プリント、顔料プリント)
ちなみに現在の日本で上記三種すべてのプリント手法ができる工場は少ないそうだ。
参考までにプリント手法ごとの特徴について下記にまとめてみた。
どの手法が適切かは予算・納期・必要量・プリント内容等によって異なるので顧客との相談によって決まる。
染色の基本
工程について入る前に染色の基本を教えていただいたので皆様にも共有したい。
染料によるプリントの場合は、ロータリースクリーンプリント/フラットスクリーンプリント/デジタルプリントに関わらず「反応性染め」である。
カラーペーストという染料・水・糊剤・アルカリ・尿素をあわせたものを熱エネルギー+水を加える(蒸す)ことにより柄を定着させる。
(ちなみにカラーペーストの材料となる染料は色、糊剤は柄がにじまないように、アルカリと尿素は発色・固着させるため役割があるそうだ。)
基本的な工程
プリント手法によって工程が異なるので下記の表にまとめてみた。
ロータリースクリーン/フラットスクリーンとデジタルプリントの大きな作業の差は、前者は版の制作が必要なのに対し、後者は版の制作が必要ないことであろう。
まずは、ロータリースクリーン/フラットスクリーンプリントについて、その次にデジタルプリントの染色までの流れについて記載したい。
ロータリー/フラットスクリーンプリント
<①見本作成~④染色までの流れ>
①見本作成
デザインが入稿されたら、版の制作・調液を行い試し刷りを行う。
これは全行程のミニバージョンのようなもので本刷りの際に行われる見本制作用の機械等を使用してカラーペーストの調液、見本機によるプリント/傾斜台での見本刷り、蒸し洗い作業等が行われる。
<画像:松尾捺染株式会社ホームページ.プリント加工事業. http://www.matsuo-nassen.co.jp/print/#anchor7, (参照2022-09-05).>
見本の作成が完成したら、顧客と共に色の確認を行う。
松尾捺染株式会社の場合は、同社のカラーリスト(色彩の専門家)も打ち合わせに入りどのような色に染色するかを打ち合わする場合もあるそうだ。
②準備
生地目のチェック
まっすぐにプリントするために生地目の確認を行う。
ちなみに生地については、顧客から納品される場合と松尾捺染株式会社が用意する場合とがあるそうだ。
生地をつなぐ
続けてプリントするために生地同士をつなぎあわせる。
<画像:松尾捺染株式会社ホームページ.プリント加工事業. http://www.matsuo-nassen.co.jp/print/#anchor7, (参照2022-08-17).>
③調液
見本作成時に顧客と確認した色合いを元に調液を行う。
<色糊>
④染色
フラットスクリーンプリント
ベルトコンベアのようなもので流れる生地にたいしてセットされた版がガチャンガチャンと上下を繰り返して模様をつけていく。
染株式会社ホームページ.プリント加工事業. http://www.matsuo-nassen.co.jp/print/#anchor7, (参照2022-08-31).>
ちなみに今は機械になっているが、その昔は手作業で行っており、スクリーン毎に職人が立ち流れ作業で染色を進めていたそうだ。夏の暑い中でも作業を行うので汗だくになったそうで、休憩中はじゃんけんで負けた人がアイスクリームを買いにいったそうだ。
ロータリースクリーンプリント
船場盛進堂の記事(第一部)でも紹介したロータリースクリーン用の筒。筒ごとに柄が異なり、ぐるぐると回転することにより生地に模様をつけていく。
先般にお伝えした手法の中では一番早いプリント方法だ。また、つなぎ目もなく加工できるため連続柄や総柄にも適している。
この後は⑤仕上げ作業になるのだが、デジタルプリントとも同じ流れになるので後程記述したい。
デジタルプリント
<①見本作成~④染色までの流れ>
さていよいよデジタルプリントについて!
こちらは船場マップのオリジナル生地を作成してもらったので、動画等もいれつつ紹介したい。
①見本作成
こちらはフラットスクリーンやロータリースクリーンと異なり、版の作成や調液の必要がないためデジタルプリント実機で作成される。
②準備
生地目のチェック
こちらは先述のロータリースクリーンやフラットスクリーンで行う作業と同様であるため割愛する。
生地の前処理加工
生地の前処理加工を行う。こちらはロータリスクリーンやフラットスクリーンではカラーペーストの調液を行う際に、染めるために必要な糊剤(こざい)やアルカリ、尿素を加える。だが、デジタルプリントの場合は、染料自身は機械のノズルからでてくるのだが、他は含まれていない。これを補完するために、前もって布に糊剤・アルカリ・尿素を塗布する。
※ただし顔料は生地を染めるというよりは塗るという作業に近いらしく、染めるための前処理作業が必要ないそうだ。
③調液
作業なし。(染料がノズルから直接でてくるのでこちらの作業は必要がなくなる)
④染色
地の目を確認しつつ生地をセット。データに基づいてプリントがはじまる。
黒いノズルが動きながらプリントをしていく。
プリントの様子は動画でおさめたので是非ご覧いただきたい。
さて、船場マップは染料のプリントだったが、顔料のプリントもみせてもらったので動画に上げたい。
※ちなみに顔料インクの場合は蒸し・洗う作業が必要ないそうだ。
松尾捺染株式会社のオリジナル生地は楽天市場でも購入できる
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⑤仕上げ
さて、いよいよ仕上げの段階。
染料を使用する場合は、ロータリースクリーンプリント/フラットスクリーンプリント/デジタルプリントに関わらず染料を生地に定着するため蒸しす作業が必要だ。また、蒸し後は不要な汚れを取り除くために洗う作業も行う。
実際に船場マップの生地を蒸し&洗いしている様子を動画に撮っていただいたのでご覧いただきたい。
蒸し
洗い
こうやって完成した生地はプリント不良がないか等を丁寧に検品され顧客のもとに届く。
<完成したプリント生地>
なんと社長自ら届けてくださった。
終わりに〜Appreciation〜
松尾捺染株式会社の工場見学を終えてふと思い出した言葉がある。
“Appreciation”だ。
筆者がアクセサリーのワークショップをしていた頃、ベルギーから来た女性が言った言葉だ。
普段何気なく手に取っているものもこうやって作られている様をみると感謝、ありがたみを感じると。
蒸し・洗いの動画をご覧いただいてお気づきになった方もいらっしゃるかと思うが、工場では職人さんが汗だくになって作業を進めている。
船場マップの生地がこうやって様々な方々の手を通して出来上がっていく様をみるとグッと込み上げてくるものがあった。
今回作ってくださった生地は 感謝の心をもって大切に大切にしたい。
お問い合わせ
[プリント加工] 松尾捺染株式会社 info@matsuo-nassen.co.jp
[染色用の布] 船場白生地商店 06-6264-2888
[記事] 船場マップ info@senbamap.com
おまけ
大正時代に創業した松尾捺染株式会社。
創業時は木版の彫刻業をされていたそうだ。工場を訪れると歴史のある会社ならではの機械を発見!
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